相続税について 〜計算例〜

 平成18年に夫が死亡し、妻と子供A(一般障害者22歳)・子供B(18歳)が以下の財産・債務を取得した場合。
(取得人については以下の通り)
 本来財産の内訳 取得人
   自宅家屋2,000万円
   自宅土地1億円(300平方メートル)
   有価証券5,000万円
   現金200万円
   普通預金1,000万円B
   定期預金C5,000万円(既経過利息を含む)A
   定期預金D3,000万円(既経過利息を含む)B
   家具一式300万円
 みなし財産の内訳  
   生命保険E5,000万円(受取人は妻)
   生命保険F2,000万円(受取人はA)A
   生命保険G3,000万円(受取人はB)B
   死亡退職金3,100万円(内、弔慰金は100万円)
 債務の内訳  
   銀行借入金1,000万円
   未納固定資産税100万円
   葬式費用300万円
 生前贈与財産(相続の開始前3年以内)の内容
   現金(妻が受取り)210万円(贈与税額10万円)
   現金(Aが受取り)210万円(贈与税額10万円)A
   現金(Bが受取り)210万円(贈与税額10万円)B
 

(1) 課税価格の合計額の計算

 a) 妻. 家屋 2,000万円 + 土地 3,600万円 + 有価証券 5,000万円 +
       現金 200万円 + 家具 300万円 + 生命保険E 4,250万円 +
       退職金 1,500万円 − 借入金 1,000万円 − 未納税金 100万円 −
       葬式費用 300万円 + 贈与財産 210万円 = 1億5,660万円
  自宅土地には小規模宅地等の特例を適用する      →小規模宅地等の特例について
       1億 −(1億 × 240平方メートル/300平方メートル × 80%) = 3,600万円
  →生命保険のうち非課税金額を控除する         →生命保険の非課税金額について
       500万円 × 3人(法定相続人の数) = 1,500万円
       5,000万円 + 2,000万円 + 3,000万円 = 1億円
       5,000万円 − (1,500万円 × 5,000万円 / 1億円)= 4,250万円
  →退職金のうち非課税金額を控除する           →退職金の非課税金額について
       500万円 × 3人(法定相続人の数) = 1,500万円
       3,100万円 − 100万円(弔慰金) = 3,000万円
       3,000万円 −(1,500万円 × 3,000万円 / 3,000万円)= 1,500万円
 
 b) A. 定期C 5,000万円 + 生命保険F 1,700万円 + 贈与財産 210万円
       = 6,910万円
  生命保険のうち非課税金額を控除する
       2,000万円 − (1,500万円 × 2,000万円 / 1億円)= 1,700万円
 
 c) B. 普通 1,000万円 + 定期D 3,000万円 + 生命保険G 2,550万円 + 
       贈与財産 210万円 = 6,760万円
  生命保険のうち非課税金額を控除する
       3,000万円 − (1,500万円 × 3,000万円 / 1億円)= 2,550万円
 
 d) 合計額
  1億5,660万円 + 6,910万円 + 6,760万円 = 2億9,330万円

(2) 課税遺産総額の計算 

       2億9,330万円 − 8,000万円(基礎控除額) = 2億1,330万円
   →基礎控除額について
       5,000万円 + 1,000万円 × 3人 = 8,000万円

(3)相続税の総額の計算(法定相続分で計算後、それぞれの取得割合で相続税を按分)

   →相続税の税率について
a) 妻. 2億1,330万円 × 1/2 = 1億665万円
      1億665万円 × 40% − 1,700万円 = 2,566万円
  
 b) A. 2億1,330万円 × 1/2 × 1/2 = 5,332万5千円
     5,332万5千円 × 30% − 700万円 = 899万7,500円
 c) B. 2億1,330万円 × 1/2 × 1/2 = 5,332万5千円
     5,332万5千円 × 30% − 700万円 = 899万7,500円
 d) 合計額
     2,566万円 + 899万7,500円 + 899万7,500円 = 4,365万5千円
 e) 財産取得割合(小数点2位未満は合計が1になるよう納税者の任意)
  妻. 1億5,660万円 / 2億9,330万円 = 0.533 ⇒ 0.54
     4,365万5千円 × 0.54 = 2,357万3,700円
  A. 6,910万円 / 2億9,330万円 = 0.235 ⇒ 0.23
     4,365万5千円 × 0.23 = 1,004万650円
  B. 6,760万円 / 2億9,330万円 = 0.230 ⇒ 0.23
     4,365万5千円 × 0.23 = 1,004万650円
  合計額
     2,357万3,700円 + 1,004万650円 + 1,004万650円 = 4,365万5千円
 

(4) 税額控除 

 a) 贈与税額控除(対象者は妻・A・B 控除額はそれぞれ10万円)
b) 配偶者の税額軽減(対象者は妻)
   《a》 贈与税額控除後の税額
      2,357万3,700円 − 10万円 = 2,347万3,700円
   《b》 配偶者の税額軽減について
      2億9,330万円 × 1/2 = 1億4,665万円 < 1億6,000万円 ・・・ゆえに 1億6,000万円
      1億5,660万円 < 1億6,000万円 ・・・ゆえに 1億5,660万円
   《c》 4,365万5千円 × 1億5,660万円 / 2億9,330万円 = 2,330万8,465円
   《d》 《a》 > 《c》 ・・・ゆえに 2,330万8,465円
c) 未成年者控除(対象者はB)
   6万円 ×(20歳 − 18歳)= 12万円
d) 障害者控除(対象者はA)
   6万円 ×(70歳 − 22歳)= 288万円

(5) 各人の相続税額 

 

a) 妻.
   2,357万3,700円 − 10万円 − 2,330万8,465円 = 165,235円
   ⇒ 165,200円(百円未満切捨て)
b) A.
   1,004万650円 − 10万円 − 288万円 = 706万650円
   ⇒ 7,060,600円(百円未満切捨て)
c) B.
   1,004万650円 − 10万円 − 12万円 = 982万650円
   ⇒ 9,820,600円(百円未満切捨て)
d) 相続税額の合計額
   165,200円 + 7,060,600円 + 9,820,600円 = 17,046,400円

【結論】 最終納税額の合計は、約1,705万円で、課税遺産総額の2億9,330円の約5.8%となります。以下、参考のため、各人別の数字をまとめています。配偶者は税額の軽減により、取得財産に比べ相続税額が子供達よりも格段に低くなっているのがわかります。


 子供A子供B合計
本来財産の取得額175,000,00050,000,00040,000,000265,000,000
みなし財産の取得額81,000,00020,000,00030,000,000131,000,000
負担する債務の金額14,000,0000014,000,000
生前贈与を受けた金額2,100,0002,100,0002,100,0006,300,000
取得した遺産金額244,100,00072,100,00072,100,000388,300,000
課税遺産総額156,600,00069,100,00067,600,000293,300,000
基礎控除額80,000,00080,000,000
法定相続分の相続税25,660,0008,997,5008,997,50043,655,000
財産取得割合の相続税23,573,70010,040,65010,040,65043,655,000
税額控除の合計23,408,4652,980,000220,00026,608,465
各人の相続税額1652007,060,6009,820,60017,046,400


1. 相続放棄(3ヶ月以内)

a)相続する債務が財産を上回る場合
 

親や配偶者に莫大な借金があっても、残された子供や配偶者がその借金を背負いこまずに済むように、相続人には相続を放棄する権利があります。

b)事業承継のため一人に財産を集中させたい場合
 被相続人の事業を息子一人に相続させるため、他の相続人が相続放棄をすることで、事業用の財産を息子一人に集中させることができます。
注)被相続人の保証債務なども承継しますので、早期に財産債務を確定させる必要があります。
注)相続放棄による代襲相続はありません。
注)相続人の範囲や相続分に影響が生じる場合があります。
注)法定相続人の数には影響を与えません。
注)相続が開始した事を知った日から、3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出しなければいけません。
注)相続放棄申述書を提出しなかった場合や、相続財産を処分した場合には、相続したことを承認したとみなされ、相続放棄ができなくなります。

2. 限定承認(3ヶ月以内)  

 相続財産の範囲内に限って債務を承継するという相続の方法を限定承認と言います。
相続財産に収益を生むような不動産があり、なおかつ相続財産を上回る債務がある場合等に有効な相続方法となりえます。
注)相続放棄は相続人単独で行うことができますが、限定承認は相続人全員で行わなければなりません。
注)限定承認前に相続財産を処分したりすると相続した事を承認したとみなされ、限定承認ができなくなります。
注)相続が開始したことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に家事裁判申立書を提出しなければいけません。

3. 所属税等の準確定申告(4ヶ月以内)
   被相続人が不動産所得や事業所得を営んでいた場合、相続人が相続の開始を知った日から4ヶ月以内に準確定申告
        を行わなければなりません。

4. 相続税の申告と納付(10ヶ月以内)

   相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
   そして相続税は、金銭で一時に納付することが原則とされております。
   ただ、相続税額は多額になることも少なくないため、一時納付の特例として延納が、延納もできない場合、金銭納付の
        特例として物納がそれぞれ認められています。
   →相続税の延納
   →相続税の物納

5. 遺留分の減殺請求(1年以内)
   遺言によって遺留分未満の財産の取得しか出来なかった法定相続人は、遺留分を侵害されている相手に遺留分減殺
        請求権を有することになります。
   遺留分は下記の通りです。なお、兄弟姉妹に遺留分はありません。
   a) 相続人が直系尊属のみの場合 1/3
   b) 相続人が(a)以外の場合            1/2